CrossFit の魔法: 魔法か本物の科学か?

ステファン・ロシェ、ニコール・キャロル、メリッサ・インガー共著

 

先週、CrossFitの「魔法」を説明するための枠組みとして、この式を提示しました。

方法論 + 精神 (コーチ + コミュニティ) = CrossFit

来週からは、この公式の要素について掘り下げていきますが、その前に、なぜCrossFitが科学的根拠を持ちながら、魔法のようだと言われるのか、その理由を説明する必要があります。

CrossFitの魔法と科学

長い間、魔法と科学という言葉は、CrossFitの中で頻繁に用いられる言葉でした。

2005年、CrossFitの創始者である グレッグ・グラスマン氏は、「魔法は動作に、芸術はプログラミングに、科学は説明に、そして楽しみはコミュニティにある」と言いました。

CrossFitプログラムを決意を持って実践することで、まるで魔法の ような 成果を得ることができます。 80歳の方が20代のアスリートと一緒にスクワットやスレッドプッシュをするのは、私たちのプログラムやコミュニティを知らない人にとっては、若さの泉のような魔法を見つけたように思えるかもしれません。 私たちは世間一般が持つ、老化に対する考え方を変えました。精神的にも肉体的にも、数え切れないほどの変化を目撃してきました。 また、CrossFitのおかげで、進行が必然と思われていた慢性疾患の発症を遅らせたり、症状を抑えたり、さらにはそのような健康状態から回復したという多くのアスリートの話も聞いてきました。 これらの話は個々に聞くと逸話や魔法のように聞こえるかもしれません。しかし、総合してみるとCrossFitの公式がもたらす成果を示す列記としたデータだと言えます。

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Pat, 80, rows at CrossFit Utah — Photo by Jake Dickerson

Pat, 80, rows at CrossFit Utah — Photo by Jake Dickerson

悪い科学

CrossFitの成果が魔法のように感じられる理由は、それを説明する科学を凌駕しているからです。 科学界が、私たちがやっていることを検証して、私たちがすでに得た知識を確認するための実験を作り、そして実施するには長い歳月を必要とします。

例えば、2000年代初頭から食品業界に後押しされた科学が、脂肪の摂取を否定し、シリアルや穀物などの精製加工された炭水化物を健康的な食生活の一部として推奨する中、CrossFitは高タンパク、高脂肪、少〜中程度の量の炭水化物を摂取する食事処方を提唱してきました。 エリートレベルのフィットネスを作り、慢性疾患を防ぐことのできるこの食事処方は、数百万ものCrossFitアスリートが得た成果 (=データ) によって長年支持されてきました。 そして、近年ついに、従来の科学研究もCrossFitの食事処方に追いつき、同じ意見に変わってきました。

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CrossFit recommends eating meat and vegetables, nuts and seeds, some fruit, little starch, and no sugar. Learn more about CrossFit’s nutrition recommendations in the CrossFit Nutrition 1 Course.

同様に20年前にCrossFitは、低強度の有酸素運動を週に2〜3日実施し、トレーニングマシーンを使ったアイソレーション動作で筋力トレーニングを週に2〜3日実施することが健康を得るための最善の方法だという運動科学の一般的な推奨を否定しました。 繰り返しになりますが、世界中でワークアウトを記録する何千ものCrossFitアスリートたちは、測定、観察、再現可能なデータを示し、有酸素運動とボディービルのような筋力トレーニングを分けて実施するよりも、CrossFitのトレーニング方法がフィットネスレベルを高める上でより優れていること証明してきました。 現在の運動科学には、実用的動作を用いたプログラムの価値を評価する研究結果が豊富に存在します。 デッドリフト、プレス、スクワットなどの実用的動作を運動強度を用いて実施することは、フィットネスレベルを向上する上で、一般的な商業ジム施設で人気のあるトレーニングマシーンを主体としたアイソレーション動作や低強度のプログラムより有効であることにやっと科学が追いつき始めているのです。

真の科学

真の科学とは、検証可能な仮説から始まり、その仮説を検証するための実験へと続きます。実験を通して、測定可能、観察可能、再現可能なデータを得ることで、その仮説を支持または否定することができるのです。 そして、もしあなたがCrossFitプログラムを実施していて、ワークアウトと食事処方を記録しているのだとしたら、それはあなたが、人間のフィットネスと健康を最適化する方法に関する仮説を検証するために実施されている、大規模な実験に参加していることになります。

CrossFitは、研究室からデータを得ることはしません。私たちのトレーニング方法と食事処方に関する原理を導き出すためのデータは、数え切れないほどのアスリートたちが記録してきたワークアウトのタイム、負荷の重さ、動作の距離またはレップ数から得ることができるのです。

ワークアウトを測定し、記録することは、私たちの文化の一部であり、CrossFitを世界中のガレージ、CrossFitアフィリエイト、公園で実施されている巨大で効率的な科学的な実験にしています。 記録されたすべてのワークアウトは、データポイントを提供してくれる独自の実験です。 何万人ものアスリートから集められたこの測定、観察、再現可能なデータによって、フィットネスと健康の最適化のために運動強度、実用的動作、多様性、適量の自然食品を摂取するという食事処方の価値が証明されているのです。

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Jennifer Reichert Reid at CrossFit Tilt Waltham — Photo by Patrick Quinn-Paquet

Jennifer Reichert Reid at CrossFit Tilt Waltham — Photo by Patrick Quinn-Paquet

CrossFitのフィットネスに対する科学的アプローチのもう一つの利点は、フィットネスと健康を向上させると主張する他のあらゆる方法を評価することができることです。 評価できると言うことは、簡単に言えば、証拠に基づくプログラムであるということです。 つまり、もし誰かがその方法がCrossFitで実践されていない新しい方法で、現在および長期的に仕事遂行能力を向上させることをデータで証明することができれば、私たちはその方法をCrossFitのプログラムに取り入れます。CrossFitはオープンソースとして生まれたモデルなので、私たちが取り入れたベストプラクティスは、コミュニティにすぐさま浸透し、アスリートたちはすぐにその方法を実施し、継続して実験を繰り返してより良い方法へとしていきます。 この厳格かつ科学的な実験を繰り返すことにより、本当に効果がある方法を伝える一方、適切ではないものを排除、または否定するCrossFitのやり方が生まれたのです。

膨大な数のアスリートのトレーニング結果や生活習慣 (栄養、睡眠、ストレス管理など) からデータを収集し続けることで、最終的にはアスリートの特定の生活習慣と運動の組み合わせがもたらす結果を予測する能力を得ることができます。 さらに価値のあることは、最高の人生の質 (フィットネス) と最高の人生の量 (長寿) を実現する生活習慣と運動の組み合わせに関する要因を予測できることです。 このようにして、CrossFitの実践する真の科学は、私たちの行動に影響を与え、私たちが健康とフィットネスに関する目標を達成するために役立っているのです。

世界中で何百万人ものCrossFitアスリートがトレーニングを実施し、その結果を記録しています。これにより、測定・観察・再現可能なデータが提供され、CrossFitプログラムの有効性と成果の一貫性が証明され続けているのです。